あしたのこと。

地方住みアラサーオタクの日常

舞台『妖怪アパートの幽雅な日常』感想 ※ネタバレあり

妖怪アパートの幽雅な日常

紀伊国屋サザンシアター 1/12(土)マチネ

 

 今年の舞台初めは妖アパでした。

 もともと別記事にまとめた北斎13日マチネだけ決まっていたところに、後で情報解禁された妖アパ、松ステ喜劇上映会、あんステMoMを突っ込んだ感じです。そんなにしょっちゅう遠征できるわけでもないので詰め込めるときに詰め込んどこ感満載の2日間でした。

 ほんとは封神演義もぶっこもうとしたのを、金銭面と体力面を理由に断念した感じ。

 あんステの前山英智と小松敬人が好きな女だったので(最推しは零くんのあんでの女ですが)、あんステフェスロスを引きずってのチケ取りでした。

 まあキャスティングもあんステの女を狙ってのことだと思いますが、良い作品で今年の始まりにはとてもよかったと思います。

 

 原作もアニメもタイトルだけはかねがね程度で、原作1巻を購入したもののずっと忙しくて、何やかやあって夕士が妖怪アパートに引っ越してきてこのアパートはなんだがおかしいと思い始める序盤までしか読めずに観劇にいたりました。まあ、問題はなかった。

 ここから先はネタバレ含みますのであしからず。

 

◆前ちゃんについて

 妖アパも前ちゃんも知ってる友達には、前ちゃんが夕士はなんかちょっとイメージ違うかも、と言われました。それに関しては、完全にキャスト目的でチケット取ったわたしでも、原作の挿絵の夕士からして、たしかにな、と思ってはいました。わたしの場合は前ちゃんを英智から入って、鶯丸を経ての今回なので、いちおう御茶ノ水ロックとかウィザードも見てはいるものの、基本的に品のある役のイメージが大きくて、「~ッス!」口調で喋る前ちゃんがあまり想像つかなかった部分もあります。

 始まってみると、ああ、なるほど、とはなりました。

 いやまあ、正直言えば、前ちゃんてご実家が裕福とも聞いたことはありますが、ご本人の雰囲気がお金で苦労してる感ないというか、刀ステ演出の末満さんがおっしゃるところの「生まれ持った気品みたいなもの」がやっぱりキャラクターの雰囲気を考えると違和感がぬぐい切れなかったんですよね。

 だけど、変わり果てたクリの母親に叫ぶシーンで、ああ、たぶんここのために前ちゃんになったんだろうな、と思えました。好きなシーンと言うには悲痛で、客席のあちこちからすすり泣きが聞こえてきた場面だったのですが、あの叫びが、両親を突然失っていままで生きてきた夕士の叫びそのものに思えたから。クリの母親の一件のあとも、表面上は笑って、でも誰にも頼れなくて、自分で大丈夫だと言い聞かせて、自分を内へ内へと押し殺していく夕士の姿が痛くてつらくて、でも高校生ができることってそんなになくて、客席で見てるだけなのがもどかしくすら思えました。大丈夫だよ、ちゃんと見てるよって言ってくれる人が必要なのに、唯一寄り添おうとしてくれている親友の前でも虚勢を張ってしまうのが、どうしようもなく不器用で。そういう感情ののせ方が上手いな、と思う役者さんです。前ちゃんの芝居のそういうところが好き。

 

 ここから完全に蛇足なんですけど、今回、ちょっとだけ原作を読んだとき、うっそ前ちゃん中3の終わりから始まるのマジで?と思いましたが、やはり中3の卒業式からでしたね。3月9日か、脳内でレミオロメン流れるわ……(世代)。前ちゃんと同世代なのでアラサーの中学生新鮮やなと思いました。

 あとアパートのみんながわちゃわちゃ喋るシーンが結構あって、たぶん日替わりでアドリブ入れつつだったと思うんですが、前ちゃんの「乳首ドリルすな」に不意打ちでやられました。元ネタ知らなかった友達に後で動画見せながら解説したけど、人生で乳首ドリルの説明する日がくるとは思わなかった笑

 

◆小松くんについて

 もうあんステから来た女だからこういう視点になってしまって申し訳ないけど、それも見越してのキャスティングだと思うから遠慮なく言います。ここでも幼馴染ありがとうございました。

 舞台の構成が、中盤までは夕士が高校に入ってからどんなことがあったのかを長谷に語るという形式だったので、妖怪アパートの幽雅な日常を長谷が舞台の端から見守るという状態でした。最早、小松準弥がいる優雅な日常って感じ。相変わらず足がえげつなく長くて持て余してる感あってよかったです。冬のシーンのコートとマフラーあまりにも好きだったけど記憶が曖昧であんまり自信がない。コートとマフラーしてましたよね?

 

◆佐伯くんについて

 わたし佐伯くんは守沢千秋しか知らないし、守沢千秋も佐伯くんから入ってる(あんステの円盤見てゲーム始めた)ので、わたしにとって佐伯くんは=守沢千秋なんですけど、守沢千秋静かな役できるんだ……って思いました(失礼)

 そもそもわたしが原作は龍さん出てくるところまで読めてないので、さっぱりどういう人かわからないまま見てたんですが、メインキャラではないけど、キャスティング的には目玉のひとつという形でしたね。

 

◆個人的に印象に残った方

 一色さんあと骨董屋さんの方が月並みな表現になってしまいますが、上手だなと思いました。一色さんの谷さんはわちゃわちゃしたのをコミカルかつふんわりとまとめるのがすごく上手くて、みなさんもちろん計算のうえでわちゃわちゃしているんでしょうけど、ああいうクッションがあるのわかったうえでわちゃわちゃできるのは安心だろうな、と勝手に思ったり。

 骨董屋さんの細見さんはめっちゃええ声でした笑 妖怪というファンタジー要素入りつつも基本は普通の一般社会が舞台の作品の中で一番奇抜な衣装のキャラクターでありつつも、衣装負けしない存在感と説得力でしたね。おそらくアドリブ仕掛人だったように感じたのですが、特に前ちゃん、乗ったりかわしたりが日々鍛えられているんだろうなと思いました。

 秋音さんとか、従姉妹ちゃんとか女子も可愛かったし、クリの子も可愛くて、虐待シーン(もちろん子役の子本人を傷つけることは一切ない)辛かった……

 カーテンコールでクリがシロ(大きな犬 舞台ではぬいぐるみ)をお辞儀させてるのも可愛かったです。

 あと印象に残ってるといえば、ダンサーさんなんだけど、黒子の役目も果たしつつ、様々な妖怪的な演出もこなし、変わり果てた姿のクリの母親もこなし、すごいんだけど、普通に気になった笑 そういう演出なのは重々承知だけど、向き不向きがある演出だなあと感じました。わたしは気にしないこともできるけど、気にならないわけではないって感じ。

 

◆どうでもいい話

 例のクリの母親のシーンでめちゃくちゃに泣けたらしいわたしの近くにいたお客さん、めっちゃ鼻すすってるなとは思ってたけど、最終的に鼻かみだしてちょっと面白かった笑 まあ、鼻かまないといけないほど泣いたなら仕方ないよね、仕方ないけど、いやめっちゃ鼻かんでますやんって音出さんでもよくない?ってなりました笑 かむのは仕方ないけど音遠慮してほしかった笑

 

 

 紀伊国屋サザンシアターは初めての劇場でしたが、あれくらいの規模の劇場はやっぱり好きだなあと思いました。世界観に入り込みやすいというか。

 前ちゃんのツイートで、「心の旅」という表現がありましたが、まさにそんな舞台だと思います。誰にも頼れなかった男の子が自分の居場所を見つける物語。とても素敵な舞台でした。