ドラマ「私の家政夫ナギサさん」最終回感想 わたしが抱いたモヤモヤの正体
毎週決まった時間にアニメを見ることができないオタクになってからすでに数年経過している。
30分のアニメも見られないので60分(実質45分?)のドラマはさらにハードルが高くなってしまい、録画したものの見ないまま消した作品も多い。
そんななか、今期は「MIU404」と「ナギサさん」、「アンサングシンデレラ」を視聴した(「アンサングシンデレラ」は視聴継続中)。
「MIU404」は4話から、「ナギサさん」は友人の薦めで2話からの視聴となった。(「アンサングシンデレラ」は初回から見ている。たぶんこれらが同じ週だったのだと思う)
圧倒的に好きなのは「MIU404」で、基本的にドラマは全てTVerの見逃し配信を活用して視聴していたのだが、「MIU404」だけは最終的にリアルタイムで見たし、Twitter実況にも参加した。
「MIU404」の最終回もIFルートのあたりは初見だと一瞬意味がわからなかったが、作中でずっと触れてきた、誰がどういうきっかけでどういう方向に進むかわからない”スイッチ”や”選択”のことだと理解すれば、IFルートもあり得たかもしれないなかで彼らのこれまでの積み重ねと、彼ら自身の選択で迎えたラストはとても良かった。
「MIU404」は本当に素晴らしいドラマだったので、ぜひ見てほしいのだが、とりあえず「ナギサさん」の話をする。
「ナギサさん」も支持されたドラマで、最終回視聴率は「逃げ恥」に迫るほど、平均視聴率については「逃げ恥」を超えていたという記事も見た気がする。
支持される理由も何となくわかる。
母からの悪意なき「やればできる子」という呪いに始まる、「こうでなくてはいけない」という既成概念からの脱却、「こうじゃなくてもいい」という肯定はいつだって人には必要だ。
家事ができない女でもいい。
お母さんになりたいおじさんでもいい。
そこから「わたしはわたしのままでいい」という自己肯定ではなく、「だからこういう夫婦関係もありだよね」を終着にしたのがこのドラマなのだと思う。
もちろん、メイとナギサさんは「ありのままでいさせてくれる」関係だし、そこにも触れてはいるので、自己肯定は完了しているのだが、わたしにはこのドラマが提示してきた「こういう夫婦関係」が刺さらなかった。それだけなのだ。
「ナギサさんじゃなきゃダメなんです!」とメイは言ったが、それが「逃げ恥」終盤に出てくる”愛情の搾取”に思えたのが大きい。まあ、この時点では互いに愛情の有無を確認できていなかったのだけれど。
互いの好意を前提とすると、一見メイとナギサさんの利害は一致するように思える。
でも家事はナギサさんに全振りなわけで、ナギサさんは本業の家政夫サービス(本社に異動になるならデスクワークとかになるかもしれないが)とプライベートの家事の両方を担うことになる。それは果たして夫婦関係としてフェアなのだろうか?
いや、夫婦間のことは利害の一致だとか、フェアだとかで考えることではないのかもしれないし(フェアであるべきだとは思うが)、そもそも他人が口を挟むことでもないのだが。メイが下手に家事に手を出したほうがナギサさんの手間は増えるだろうし。
だけど、依頼主と家政夫ではなく、対等な夫婦という関係になったからには、メイがいくら家事がダメといっても互いに助け合うべきなのではないだろうか。家事という形じゃないところで助け合っているのだから、それでいいといえばいいのかなぁ?
仮にメイが家事の一部を負担したとしたら、メイは仕事に全部振り切れなくなるからメイが望む生活ではなくなってしまうんだよね、たぶん。
共働き家庭が増えるなかで依然として女性の家事負担が重い現代社会だが、家事負担が男女逆になっただけのエンドでこれは根本的な解決ではないのでは……?と思ったのがわたしがもやもやを抱いた正体だと思う。
女だから、男だから、家事ができるできないなんてのはナンセンスで、できないなら外注するなり、他人に頼ったっていいのだ。そういうサービスだってあるんだから、それらを利用しながら、自分らしくいられるならそれでいいじゃないか。
ここまでは共感していたし、素晴らしいなって思っていたけど、一緒にいるために結婚して家事を全部やってもらう、となるとそれはまた話が違ってくるのでは?という違和感を抱いてしまった。
これまで相手はプロだから、お金を払っているから、と頼めた下着の洗濯なども、今度は夫だからで無賃金ですべて任せるというのはまさしく”愛情の搾取”ではないだろうか。
この男女逆バージョンが今の多くの家庭の現状なのだと考えると、安易にその終着でよかったのか?という疑問が残る。
このドラマが支持されたのは、「わたしだって家事とか全部やってもらいたい!」という女性の気持ちも少なからずあるのではないだろうか。だとしたら、その気持ちはめちゃくちゃわかる。
新しい夫婦像として打ち出されたのがメイとナギサさんなのだと思うが、性別逆転しただけの現代社会の夫婦像が目新しく映るくらい、メイとナギサさんのような夫婦はほとんどありえないことで、それほど現代女性は追い詰められているのか、と思ってしまった。
いろいろ述べたが、多部ちゃんはキュートだったし、衣装もめちゃ可愛かったし、ナギサさんに癒されもした。
おじキュンあたりのワードがいまいち刺さらなかったので、シンプルにわたしの嗜好に合わなかっただけだろうな、という気がする。
自分の価値観のアップデートがこのドラマに追いついてない部分もあるのかな、と思った部分もあるので、この作品が良くなかったわけではないし、スペシャルも近々見るつもりだ。
だけど個人的には最終回に判明するメイの上司夫婦のほうが好きだったかな、という印象でした。